- 財団法人 関西テレビ青少年育成事業団
- 顧問 畠中 彬
自然体験は楽しいが危険がいっぱい?
今年の5月13日の朝、広島市の町を流れる川の中で小学6年生の児童3人が遺体で見つかった。前日の夕方に3人が川の中を肩を組んで楽しげに歩いているのを何人かの人が目撃していたが、その後行方不明になり家族が捜索願いを出していた。現地では前日に大雨警報が発令され、いつもより水量が増し、水深も深くなっていた。川の中を歩くという自然体験、非日常体験が悲しい結果を生んだ。
数年前、鹿児島市の公園のそばの竹藪にある洞窟の中で、4人の中学生が段ボールを燃やして一酸化炭素中毒になり死亡した。この洞窟は戦争中の防空壕の跡で、古くから付近の子どもの遊び場になっていた。心ときめく子どもの自然の中の秘密基地遊びも、火の使い方を間違ったために悲惨な結果を招くことになった。その後川の両岸には高いフェンスが張られ、すべての洞窟の入口は子どもが入らないようにふさがれた。
このように子どもにとって心ときめく自然活動や自然体験は、時として不幸な事故を起こす。そのたびに大人は子どもが自然に近づかないようにして安全を守ろうとする。このような安全確保は子どもにとって幸せなことなのだろうか?
楽しいことと安全は両立しないのか?
キャンプに行く子どもに「キャンプに行ったら何がしたい?」と聞くと「キャンプファイアー」とか「肝だめし」「飯ごうすいさん」「テントで寝る」という声が返ってくる。これらは子どもたちが日常生活では体験できないことばかりで、このような非日常的な活動や遊びが子どもには魅力的であり、楽しいことが分かる。
しかし体験したことがない「包丁やナイフを使う」ことや「火を扱う」こと、「暗い山道を歩く」ことは子どもにとって非常に危険性が高いことである。自然体験活動や野外活動の指導者はまず「子どもの喜ぶプログラムは危険性が大きい」ことを知り、「子どもの喜ぶプログラムを安全に実施する」ためには十分な計画と準備をすべきである。そして子どもにとって生まれて初めての、また日常できない自然体験や野外活動体験を無事に達成したとき、子どもにも指導者にも大きな達成感や満足感が生まれるのである。
自然体験や自然の中の野外活動には多くのリスクが伴う。しかしこのリスクを単に排除するのではなく、自然をよく理解し、人間の努力によってリスクを乗り越えていくことがこの活動のリスクマネージメントであり、そうして得られた安全はそれに伴う多くの収穫を子どもにも指導者にも与えてくれる。
大人は子どもを誤解し、子どもの楽しみを奪っていないか?
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今の大人は、自分が子どもだった頃とは時代も変わり、遊びも変わってきたため、昔の遊びなんかには興味を示さないと考えていないだろうか? 私は日本の昔遊びをいろんな機会に子どもに教えているが、子どもの関心は非常に高い。 コマ回し、剣玉、割りばし鉄砲、凧作り、折り紙、竹トンボ等どれに対しても子どもは興味深々である。 ナイフを使ったこともない子どもが竹トンボを作りたいといい、ナイフの使い方から教えたこともあった。 しかし多くの大人は日本の昔遊びなんか今の子どもは喜ばない、ナイフを使う遊びは危ないと思い教えようとしない。 子どもに関心がないのは知らないからで、ナイフを使えないのは教えられていないからだということに気づいていない。 子どもには何不自由のない豊かな生活をさせることが子どもが喜ぶと思っている。 しかし子どもは、自然の中では仲間と一緒に不便で物が少ない不自由なキャンプ生活を生き生きと楽しく過ごしている。 大人は不便で不自由な生活は不快だと決めつけ、子どもに体験させようとしない。 大人が子どもに与えようとしている楽しさや豊かさは、子どもが本当に求めているものと違うのではないかという反省が必要である。 |
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自然体験は子どもの生きる力や自己防衛力を育てる
最近は子どもたちの自然体験、野外活動体験の機会が年々減少している。昔は学校でも林間(海)学校や耐寒登山、自然教室等の行事で、子どもが自然に触れ、自然を体験する機会が多かったが、近年このような行事は経費節減や教師の高齢化等で年々減少している。反面不登校や校内暴力、自閉症や情緒障害等の子どもに関するいろんな問題が年々増加傾向である。
この2つの現象はどこかでつながっており、子どもの正常な成長にとって自然体験が大きな役割を果たしていると考えられる。このことに気づいたある市は、数年前から予算を組んで「自然体験学校」を開設し、「テレビを消して外で遊ぼう」と子どもと自然を結びつける努力をしている。
また子どもは自然体験を通して自然は楽しいだけでなく危険も多いことを知る。そして自然の中では自分の安全は自分で守らねばならないことも学ぶ。毒草に触れればかぶれ、山道を走れば転び、火は扱いを誤ればやけどをし、ナイフや包丁は正しく使わないと手を切ることを体験的に学ぶ。それは子どもが自己防衛力を身に付けることでもある。
自然活動は子どもの安全を守るために自然の危険要素を除去するのではなく、危険を知ることによってその危険から身を守ることを体験的に学ばせるのである。体験して学んだことは生涯忘れることはなく、生きる力として子どもの成長につながるのである。
関西テレビ青少年育成事業団とは
関西テレビ開局20周年記念事業の一環として昭和53年に設立された公益法人です。
すこやかな青少年の育成を目的として、青少年リーダの育成、野外活動事業の実施、視聴覚教材の制作・提供、講演会などの開催及び援助などをおこなっています。
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